先回のリレーコラム(2013年11月号)では、仏教の基本的教えである、根本理念の「十二因縁」(⇒思考の原理)、実践理論の「四諦」(⇒思考のプロセス)、基本原則の「八正道」(⇒行動の原点)には、それぞれ学ぶべき智恵が多くあることを学んだ。
また、ビジネスに役立つ仏教用語である“自利利他”、“少欲知足”、“和顔愛語”等々の言葉についても学びました。
今回は、「仏に学ぶビジネスの智慧」のテーマに筆を終えるつもりで、インド仏教発展の最終過程で発展した「密教」について触れてみたい。
我が国の密教は、インドでの発展過程とは異なり、ご存知の通り弘法大師「空海」により平安時代にもたらせられた思想である。
今日、空海思想の研究は『空海の風景』(司馬遼太郎)や『曼荼羅の人』(陳舜臣)などの小説から始まり、『ひろさちやの「空海」を読む』(ひろさちや)、『空海の思想について』(梅原猛)、『「空海」日本人のこころの言葉』(村上保壽)、『空海の思想』(竹内信夫)等を初めとして、日本思想体系『空海』(岩波書店)、『弘法大師 空海全集』(筑摩書房)、『沙門空海』(渡辺照宏・宮坂宥勝共著)、『仏教の思想9「生命の海」<空海>』(宮坂宥勝・梅原猛共著)、『空海入門』・『秘蔵宝鑰』・『般若心経秘鍵』・『即身成仏義』他(加藤精一)等々、多くの学者や仏教関係者により研究書が数多く執筆され、長年“仏”として崇められてきた弘法大師「空海」の実像が思想として明らかにされ始めてきた。
ここで紙面の都合もあり、世界を代表する思想哲学としてだけでなくビジネスにも役立つ思想として、筆者が現在最も学習の中心としている空海の主著である『即身成仏義』から「即身成仏」について簡単に紹介してみる。
“即身成仏”思想とは、空海密教の中核思想であり、空海が最も言わんとしたい思想と云え、筆者はここ数年、生涯の研究テーマとして学んできたものである。
即身成仏とは、簡単に言えば、「もし人が仏の智恵を求め、菩提心を極めようと努力するならば、いま生れたその身体において、速やかに大いなる悟りを得ることができる」となる。重要なのは、他の多くの宗派と異なり現生(いま)で仏となることができるというのである。その方法は「菩提心(仏を信じる心を持つこと)を極めようと努力をすること」であるという。そして菩提心を極めようと努力するということは、先回でも述べたように「八正道」を極めることである。さらに言えば、八正道を極めるとは、「人の喜ぶことを成す」、「人のために為ることを成す」である。「人が幸せになるには、他人が喜ぶことを成す」である。これはビジネスの基本に通じることであると筆者は考えます。
『南無大師遍照金剛』、『南無大師遍照金剛』、『南無大師遍照金剛』、『南無大師遍照金剛』、『南無大師遍照金剛』、『南無大師遍照金剛』、『南無大師遍照金剛』。